【枕草子・原文】第281段 方違えなどして ou 11か月前 方違かたたがへなどして夜深よふかく帰かへる。寒さむき事こといと理無わりなく、頤おとがひなども皆みな、落ちぬべきを、辛からうじて来き着つきて、火桶ひをけ、引ひき寄よせたるに、火ひの、大おほきにて、つゆ黒くろみたる所ところ無なくめでたきを、細こまかなる灰はひの中なかより、起おこし出いでたるこそ、いみじう嬉うれしけれ。物ものなど言いひて、火ひの消きゆらむも知しらず居いたるに、異こと人ひとの来きて、炭すみ、入いれて、熾おこすこそ、いと憎にくけれ。然されど、回めぐりに置おきて、中なかに、火ひに有あらせたるは、良よし。皆みな、火ひを、外ほか様ざまに掻かき遣やりて、炭すみを重かさね置おきたる頂いただきに、火ひども置おきたるが、いと難むつかし。 《ご案内》『枕草子・目次』のページはこちら!!