【枕草子を読む】第144段 取り所無き物 ou 2年前 【第144段】取とり所ところ無なき物もの、容貌かたち憎気にくげに、心悪こころあしき人ひと。御み衣そ糄ひ糟めの、濡ぬれたる。此これ、いみじう悪わろき事こと、言いひたると、万よろずの人ひと、憎にくむなる事こととて、今いま、止やむべきにも有あらず。又また、「後あと火びの火ひ箸ばし」と言いう事こと、世よに無なき事ことならねば、知しりたらむ。実げに、書かき出いで、人ひとの、見みるべき事ことには有あらねど、此この草さう子しを、見みるべき物ものと、思おもはざりしかば、怪あやしき事ことをも、憎にくき事ことをも、唯ただ、思おもはむ事ことの限かぎりを、書かかむとて、有ありしなり。 《ご案内》『枕草子・目次』のページはこちら!!