【枕草子・原文】第100段 御乳母の大輔の ou 2年前 御おん乳母めのとの大輔だいふの、今日けふ、日向ひうがへ下くだるに、賜たまはする扇あふぎどもの中なかに、片かたつ方かたには、陽ひ、いと華はなやかに、差さし出いでて、旅たび人びとの有ある所ところ、井ゐ出での中将ちゆうじやうの館たちなど言いふ様さま、いと、をかしう描かきて、今いま、片かたつ方かたには、京きやうの方かた、雨あめ、いみじう降ふりたるに、眺ながめたる人ひとなど、描かきたるに、(中宮定子)茜あかねさす日ひに向むかいても思おもい出いでよ都みやこは晴はれぬ長なが雨めすらむと言葉ことばに、御手てづから、書かかせ給たまひし、哀あはれなりき。然さる君きみを、置おき奉たてまつりて、遠とほくこそ、え行いくまじけれ。 《ご案内》『枕草子・目次』のページはこちら!!