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【枕草子・原文】第162段 羨ましき物

うらやましきもの
きやうなどならひて、いみじく、たどたどしくわすれがちにて、かへがへす、おなところむに、ほふは、ことわりをとこをんなも、くるくると、やすらかにたるこそ、「あれように、何時いつをり」とこそ、ふとおぼれ。心地ここちなど、わづらひて、たるに、わらひ、ものひ、おもことにて、あゆありひとこそいみじくうらやましけれ稲荷いなりおもこしまゐたるに、なかやしろほどわりく、くるしきを、ねんじて、のぼほどに、いささか、くるく、おくれて、とたるものどもの、ただきに、さきちて、まうづる、いとうらやまし。二月きさらぎむまあかつきに、いそしかさかなからばかり、あゆしかば、ときばかりに、りにけりやうやう、あつくさへまことに、びしう、「からひとも、ものを。しに、まうらむ」とまで、なみだちて、やす三十みそぢあまりりばかりなるをんなの、つぼ装束さうぞくなどにはらで、ただきはこえたるが、「は、ななたびまうではべたびは、まうたびは、ことにもひつじには、かうべし」と、みちひたるひとに、ひて、くだきしこそただなるところにては、まるまじことの、「かれに、ただいまばや」と、おぼしかをとこも、をんなも、ほふも、子、たるひといみじうらやまし。かみながく、うるはしう、さがりなど、めでたきひとやんごとひとの、ひとに、かしづかれたまも、いとうらやまし。き、うたものをりにも、づ、らるるひとひとの御まへに、にようぼういとあまさぶらに、こころにくところへ、つかはすべきおはせがきなどを、たれも、とりあとやうには、どかれど、しもなどにるを、わざと、して、御すずりろしかせたまうらやまし。ようことは、ところ大人おとななどにぬれば、まことなにあたりのとほからも、ことしたがひて、くを、これは、らで、かんだちもとまたはじめて、まひらん、などまうひとの、むすめなどには、こころことに、うへよりはじめて、つくろはせたまへるを、あつまりて、たはぶれに、ねたがりめりことふえならふに、こそしきほどは、「かれやうに、しか」と、おぼめれ内裏うちとうぐうの、御乳母めのとうへにようぼうの、おほん方々かたがたゆるされたるさんまいだうてて、よひあかつきに、いのられたるひとすぐろくに、てきさいたるまことに、おもたるひじり

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