枕草子「懸想人にて」/原文と訳・意訳

枕草子・訳②

好きだから来てくれたということは、解っている。ただ、どうということも無い話をしたり、そうではなく他の客人に混じって話し込んだりして、すぐに帰れそうな様子もなくて、一緒に来ていたお供の者が「斧の柄も、朽ちてしまいそうだなー」と、めんどくさそうにつぶやいたり「あぁ、侘しい。悩ましい、苦しいなぁ。これでは夜中になってしまうだろうなぁ」など言っているのが聞こえるのは、配慮がなくて、言った人はともかく、来てくれた当人自体の価値を下げる様に思う。

又、これでは、色気のあることなどとても言えないと、高い声で思い切って言ったのが「下行く水の」だなんて、本当に、愛しいやら、呆れるやら。陰から「雨が降りそうだなぁ」と聞こえて来るのも、本当に憎たらしい。素敵な人、貴族のお供はそんな事はしない。普通には、あるでしょうけど。色んな人が居るのだから、どんな人か見て、連れて歩いた方がいい。

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