賀茂へ詣づる道に、女どもの、新しき折敷の様なる物を、笠に着て、いと多く、立てりて、歌を歌ひ、起き伏す様に見えて、唯、何すとも無く、後ろ様に行くは、如何なるにか有らむ。「をかし」と見る程に、郭公を、いと無礼く、歌ふ声ぞ、心憂き。「郭公よ。己よ。彼奴よ。己、鳴きてぞ、我は、田に立つ」と歌ふに、聞きも果てず。如何なりし人か「甚く鳴きてぞ」と言ひけむ。なかだかわらはおひ、如何で威す人と
続けて、第247段 鶯に時鳥は劣れる
「鶯に郭公は劣れる」と言ふ人こそ、いと辛う、憎けれ。鶯は、夜鳴かぬ。いと悪し。全て、夜鳴く物は、めでたし。児どもぞは、めでたからぬ。