【枕草子・原文】第285段 清水に籠りたる頃 原文で読むための枕草子 2024.02.18 清水きよみづに籠こもりたる頃ころ、蜩ひぐらしの、いみじう鳴なくを、哀あはれと聞きくに、態わざと、御使つかひして、宣のたまはせたりし、唐からの紙かみの、赤あかみたるに、 (中宮定子)「山近やまちかき入相いりあひの鐘かねの声毎こゑごとに 恋こふる心こころの数かずは知しるらむものを 無越こよなの長なが居ゐや」 と、書かかせ給たまへる。紙かみなどの無な礼め気げならぬも、取とり忘わすれたる旅たびにて、紫むらさきなる蓮はちすの花はなびらに、書かきて参まゐらする。