【枕草子・原文】第94段 艶めかしき物

なまめかしきもの
ほそやかに、清気きよげなる公達きんだちの、直衣姿なほしすがたをかしなるわらはの、うえはかまなど。わざとにはらで、ほころびがちなる汗衫かざみばかりて、くすだまなど、ながけて、高欄かうらんもとに、あふぎかくしてたる。わかひとの、をかしなる、なつ几帳きちやうしたけて、しろあやふたあゐかさねて、ならたるうすやうさうむらいとて、をかしくたるやなぎの、たるに、あをうすやうに、たるふみけたる。ひげの、をかしうたるよふえだに、けたる。がさねあふぎいつは、あまり、あつくなりて、もとなど、にくなり。く、たるわりしろ組糸くみほそき。あたらしくもくて、いたく、りてもき、はだに、さううるはしく、わたたるあをやかなるしたより、くちがたの、あざやかに、ひも、いとつややかにて、かりたるひもの、なびかされたるも、をかしなつの、かうの、あざやかなる、の、高欄かうらんわたりに、いとをかしなるねこの、あかくびづなに、しろふだけて、いかりきて、ありくも、なまめいたり。五月さつきせちの、菖蒲あやめ蔵人くらうど菖蒲さうぶかづらあかひもいろにはを、領巾ひれ裙帯くたいなどて、薬玉くすだまを、みこたち上達かんだちなどの、たまるに、たてまつも、いみじうなまめかし。りて、こしに、けて、たふはいたまも、いとをかしりのわたはきんだちも、いとなまめかし。ろくの、あをいろ宿直とのゐ姿すがたりんまつりの、まひうどせちわらはなまめかし。

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