枕草子「生ひ先無く」/原文と意訳

枕草子・訳②

生きる希望も無く、直向ひたむきに、幸せとも言い難い暮らしをしている人は、悶々としていてどうでもよいといった風でもあって、思い遣られて、やはり、そういう人、娘などは、外に出して、世の中の有様を見せ習わさせてあげたく、内侍、宮中に勤めに出させるなど、暫し、させてあげたいと思う。

宮仕えをする人を、軽薄だと、悪い事だと思っている男、これは、本当にどうかと思う。確かに、それもまた、一理ある事か・・・。

言葉にするのもおそれ多い方達を、見掛けることは、あまりある事ではない。

(それでも)女房に仕える者や、里から出て来て清掃などをする下級の職についている人達は、畏れ多い方達に対して、恥ぢ隠れる様になる。男性ならば、特別そういうこともない、ということもなくて。

それも、ある意味、そうだと思う。「上」など言って、お世話役をするのは、「心がそそられるもの」でもないと思える。それも解らなくはないけれど。内侍の次官などといった名で、折々、内裏へ参り、祭りの使いなどに出るのは、光栄なことではないと言う事も無い。

この様にしてから、家に入った人は、とても良い。家から五節(舞姫)などを出す時に、すっかり田舎じみていたとしても、「知らない事だから人に聞くなどしなくても良い」といった風で、心憎い(惹かれる)ものだと思う。

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