【枕草子・原文】第124段 正月に寺に籠もりたる

正月むつきに、てらもりたるは、いみじくさむく、ゆきちに、こほたるこそをかしけれ。あめなどの、べきしきなるは、いとろし。
初瀬はつせなどにまうでて、つぼねなどするほどは、くれはしもとに、くるませて、てるに、おびばかりたるわかほふばらの、あしものきて、いささか、つつみもく、り、のぼるとて、なにともき、きやうはしみ、しやじゆを、すこつづありこそところけて、をかしけれのぼるは、いとあやふく、かたはらりて、かうらんさへてくものを、ただいたじきなどのやうoもたるも、をかし。(法師)「つぼねたり」などひて、くつども、て、ろす。きぬかへさまに、かへしなど、たるも、り。からぎぬなど、こはごはしく、さうたるも、り。ふかぐつはうくわなど、きて、らうほどなど、くつるは、わたりめきて、また、をかし。うちなど、ゆるされたる、わかをとこども、いへなど、またつづきて、「もとは、ちたるところに、はべめりがりたる」など、をしく。なにものいとちかく、あゆみ、さいものなどを、「しばし。ひとの、ますに。は、じらわざなり」などふを、(参詣者)「に」とて、すこし、おくるるも、り。またきも。(参詣者)「われず、ほとけまへに」とくも、り。つぼねほども、ひとの、みたるまへを、とほけば、いとうたてるに、いぬふせぎの中を、たるここいみじくたふとく、(清)「どて、つきごろも、まうでず、ぐしらむ」とて、づ、こころこさ
あかしじやうとうにはらで、に、またひとたてまつたる、おそろしきまでたるに、ほとけの、きらきらとたまいみじくたふとに、ごとに、ふみささげて、らいばんかひて、ちかふも、ばかり、すりちて、「これは」と、はなちて、べくに、せめて、しぼだしたるこゑごゑの、さすがに、またまぎれず。(法師)「せんとうこころざしは、なにがしため」と、わづかにこゆ。おびけて、をがたてまつに、「さぶら」とひて、しきみえだりて、たるなどの、たふときなども、なほをかし
いぬふせぎのかたより、ほふて「いとく、まうはべいくばかり、もらせたまべき」など、ふ。「しかじかひともらせたまり」などかせる、すなわちち、をけくだものなど、つつ、す。はんざふに、うづなどれて、たらひの、きなど、り。(法師)「御ともひとは、ぼうに」などひて、けば、はりはりく。
きやうかね、(清)「がななり」とけば、たのもしくこゆ。かたわらに、ろしきをとこの、いとしのびやかにぬかなどく。ほども、こころこえたるが、いたく、おもたるしきにて、ず、おこなこそいとあはれなれ。やすほどは、きやうたかくはこえほどに、みたるも、たふとなり。たかく、させまほしきに、して、はななどを、けざやかに、にくくはらで、すこしのびて、みたるは、何事おもらむ。(清)「れを、かなへばや」とこそおぼれ。
ごろもりたるに、ひるは、すこ長閑のどかにぞ、はやうはほふぼうに、をのこども、わらはべなど、きて、つれづれなるに、ただかたはらに、かひいとたかく、にはかに、だしたるこそおどろるれきよなるたてぶみなど、たせたるをのこの、きやうものきて、だうどうなど、こゑは、やまひびひて、きらきらしうこゆ。かねこゑひびさりて、(清)「何処いづこなら」とほどに、やんごとところひて、(法師)「さんたひらかに」など、けうなど、したる。すずに、(清)「なら」と、おぼつかく、ねんらるるこれは、ただなるをりことめりつきなどには、ただ、いとものさわがしく、もののぞみなどするひとの、ひままうづる、ほどに、おこなひも、られず。
の、るるに、まうづるは、こもひとめりぼふばらの、もたべくびやうなどの、たかき、いとしん退たいし、たたみなど、ほうと、くとれば、ただつぼねでて、いぬふせぎに、すだれを、さらさらと、くるさまなどぞ、いみじくけたるは、やすなり。そよそよと、あまりて、となちたるひとの、いやしからず、しのびやかなる御はひにて、かへひと、「うちあやふし。ことせいせよ」など、ふもり。ななつ、つばかりなるをのこの、あいぎやうき、おごりたるこゑにて、さぶらひびとけ、ものなどたるはひも、いと、をかし。またつばかりなるちごの、おびれて、しばぶきたるはひも、うつくし。乳母めのとははなど、たらむも、(清)「これなら」と、いとまほし
ひといみじうののしり、おこなかす。ざりつるを、など、てて、すこし、やすみ、ぬるみみに、てらぶつぎやうを、いとあらあらしう、たかく、でて、みたるに、わざと、たふとしともらず。ぎやうじやちたるほふめりと、ふと、おどかれて、あはれにこゆ。またよるなどは、かほらで、ひとびとしきひとの、おこなひたるが、あをにびさしぬきはたたるしろきぬども、あまて、どもめりゆるわかをのこの、をかしう、さうたる、わらはなどして、さぶらいものども、あまかしこまり、ねうしたるも、をかしかりめに、びやうてて、むかなど、すこめり
かほは、(清)「たれなら」と、いとゆかし。りたるは、「めり」とるも、をかしわかひとどもは、とかく、つぼねどもなどのわたりに、彷徨さまよひて、ほとけの御かたに、たてまつらず、たうなどびて、ささめき、ものがたりしてる、ものとはえずかし
二月きさらぎ晦日つごもり三月やよひ朔日ついたちころ花盛はなざかりに、もりたるも、をかしきよなるをのこどもの、しのぶとゆるたりたりさくらあをやぎなど、をかしうて、くくげたるさしぬきすそも、あてやかに、るるつきづきしきをのこに、さうぞく、をかしうたるぶくろいだかせて、舎人どねりわらはども、こうばいもえかりぎぬに、いろいろきぬもどろかしたるはかまなど、せたり。はななど、らせて、さぶらひめきて、ほそやかなるものなど、して、こんこそ、をかしけれ。(清)「かし」とゆるひとれど、でかはぎて、ぬるこそ、さすがに、さうざうけれ。「しきを、ましものを」などふも、をかし
やうにて、てらもり、すべて、れいならところに、使つかひとかぎりして、るは、こそおぼゆれ。なほおなほどにて、ひとこころに、をかしことも、さまざまべきひとかならず、一人ひとり二人ふたりあまも、さそまほしの、ひとなかにも、くちからも、たるなるべしをとこなども、おもふにこそあンめれたづね、ありめるは、いみじ

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