方違へなどして夜深く帰る。寒き事いと理無く、頤なども皆、落ちぬべきを、辛うじて来着きて、火桶、引き寄せたるに、火の、大きにて、つゆ黒みたる所無くめでたきを、細かなる灰の中より、起こし出でたるこそ、いみじう嬉しけれ。
物など言ひて、火の消ゆらむも知らず居たるに、異人の来て、炭、入れて、熾すこそ、いと憎けれ。然れど、回りに置きて、中に、火に有らせたるは、良し。皆、火を、外様に掻き遣りて、炭を重ね置きたる頂きに、火ども置きたるが、いと難かし。
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