【枕草子・原文】第97段 内裏は五節の程こそ

内裏だいりは、五節ごせちほどこそすずに、ただならひとも、をかしう、おぼれ。との殿もりづかさなどの、いろいろさいを、ものいみやうにて、さいしきたるなども、めづらしくゆ。せいりやう殿でんそりはしに、もとゆいむらいとやかにて、たるも、さまざまけて、をかしうのみ。うへざふわらはども、いみじいろふしおもたるいとことわりなり。やまあゐ日陰蔓ひかげなど、やないばこれて、かうぶりたるをのこありく、いと、をかしうゆ。殿でんじやうびとの、直衣なほしれて、あふぎや、なにやと、ひやうにして、「つかさされと、しきなみつ」とうたを、うたひて、つぼねどものまへわたほどは、いみじく、たらひとこころさわべしかしして、と、いちわらひなどたる、いとおそろし。
ぎやう蔵人くらうどかいねりがさねものよりことに、きよらにゆ。しとねなど、たれなかなかえものぼにようぼうの、でたるさまめ、そしり、ころは、ことごとは、めり
ちやうだいよるぎやう蔵人くらうど、いときびしう、して、(蔵人)「つくろひ、たりわらはよりほかは、まじ」とおさへて、おもにくきまで、へば、殿でんじやうびとなど「なほこれ一人ひとりばかりは」など、のたま。(蔵人)「うらやみ、り。」など、かたふに、の御かたにようぼう、二十人ばかり、りて、ことごとしうたる蔵人くらうどなにともけて、さざめきれば、あきれて、(蔵人)「いと、は、すぢ」とて、てるも、をかしれにきてかしづきどもも、みなる。しきねたなり。も、まして、いとをかしと、らんますらむかしわらはの夜は、いと、をかし。とうだいに、かひたるかほども、いとらうに、をかしかり

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