【枕草子・原文】第123段「哀れなる物」

あはなるもの
かうる、ひと鹿しかをとこわかきが、御嶽精進みたけさうじたるへだて、おこなたるあかつきぬかなど、いみじうあはなりむつましきひとなどの、ましてらむおもひやりまうづるほどさま如何いかならと、つつしみたるに、たひらかに、もうたるこそ、いとめでたけれ烏帽子えぼうしの(損じたる)さまなどすこし、ひとろきなほいみじひとこゆれ、こよなくやつまぅづ、とこそりたるに。右衛門ゑもんすけ宣孝のぶたかは、「味気あぢきことなり。ただきよきぬて、まうでんに、でふこと。必ず、よも(蔵王権現)「しくてよ」と、御嶽みたけのたま」とて、三月やよひ晦日つごもりに、むらさきの、いと指貫さしぬきしろき直衣、あを山吹やまぶきの、いみじくおどろおどろしき、などにて。隆光たかみつが、主殿とのもりすけなるは、あをいろの、くれなゐきぬりもどろかしたる水干すいかんばかまにて、つづき、まうでたりけるに、かへひとも、まうづるひとも、めづらく、あやことに、(人々)「すべて、山道やまみちに、かる姿すがたひとざりつ」と、あさましがりを。四月うづき晦日つごもりかへりて、六月みなづき十日とをかあまりのほどに、筑前ちくぜんかみせにはりに、りにしこそ、(人々)「に、けむに、たがも」と、こえしかこれは、あはれなることにはども、御嶽みたけついなり
九月ながつき晦日つごもり十月かんなづき朔日ついたちほどに、ただるかきかに、けたる螽斯きりぎりすこゑにはとりの、いだきて、たるあきふかにはあさに、つゆの、色々いろいろたまやうにて、ひかたるかはたけの、かぜかれたるゆふれ。あかつきに、ましたるよるなども、すべて、おもはしたるわかひとの、なかに。かたりて、こころまかやまざとゆきをとこをんなも、きよなるが、くろきぬたる二十日はつかあま六日むゆか七日なぬかばかりのあかつきに、物語ものがたりして、かして、れば、るかきかに、心細気こころぼそげなるつきの、やまちかく、えたるこそいとあはなれあきとしぐしたるそうたちおこなたる。れたるいへに、むぐらかり、よもぎなど、たかたるにはに、つきの、くまく、いとあらうはかぜの、たる

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