【枕草子・原文】第93段 めでたき物

めでたきもの
唐錦からにしきかざ太刀だちつくぼとけ木目もくいろく、はなぶさながく、たるふぢの、まつかりたるろく蔵人くらうどこそなほめでたけれいみじききんだちなれども、えしもたまぬ、あやおりものを、こころまかせて、たるあをいろ姿すがたなど、いとめでたきなりところしゆうざふしきただひとどもなどにて、殿とのばらのろくも、つかさるが、しもに、て、なにともざりも、蔵人くらうどぬれば、えもあさましく、めでたきせんまゐだいきやうの、あまぐりの、使つかひなどに、まゐたるを、し、きやうようたまさまは、何処いづこなりあまくだびとならこそおぼれ。
むすめ女御にようごきさきます、だ、ひめぎみなど、こゆるも、御使つかひにてまゐたるに、御ふみより、はじめ、しとねづるそでぐちなど、れ、ものどもおぼしたがさねしりちららして、なるは、いますこし、をかしう、ゆ。みづから、さかづきしなど、たまを、こころにも、おぼらむいみじうかしこまり、べちいへきんだちをも、けしきばかりこそかしこまりたれおなやうに、ありく、主上うへの、ちかく、使つかはせたまさまなど、るは、ねたさへこそおぼれ。御ふみかせたまば、御すずりすみり、御団扇うちはなど、まゐたまば、われつかうまつるに、とせとせばかりのほどを、なりしく、ものいろろしうて、じろはは、ものなり。かうぶりて、りむことちかだにいにちよりはさりてをしかるべきことを、の御たまはりなどまうして、まどひけるこそくちけれむかしくらうどは、としはるよりこそ、なきけれいまには、はしくらべをなむ、する。
博士はかせの、才有ざえあるは、いとめでたしふも、おろかなり。かほも、いとにくに、らふなれども、に、やんごとものおもはれ、かしこまへちかづきまゐべきことなど、はせたまふみにてさぶらは、めでたこそおぼれ。ぐわんもんも、べきものじよつくだして、らるる、いとめでたし
法師ほふしの、ざえる、すべて、べきらず。きやうじやの、ひとして、むよりも、あまが中にて、ときなど、さだまりたるきやうなどに、なほいとめでたきなり。くらりて、「いづら、きやうあぶらおそし」などとひて、たるほどしのびやかに、つづたるよ。
きさきの、ひる行啓ぎやうけい。御産屋うぶやみやhあじめのほふこまいぬだいしやうなど、まゐて、ちやうまへに、しつらゑ、ないぜん、御へつひわたたてまつなど、したるひめぎみなど、こえ直人ただうどこそつゆさせたま
いちひとの、御ありき。春日かすがまうで。葡萄えびぞめおりものすべて、むらさきなるは、なになにも、めでたこそれ。はなも、いとも、かみも。むらさきはななかには、杜若かきつばたぞ、少しにくき。いろは、めでたしろく宿直とのゐ姿すがたの、をかしきにも、むらさきゆゑめりひろにはに、ゆきの、たる
きんじやういちみやだ、わらはにてますが、御に、かんだちなどの、わかやかに、きよなるに、いだかれさせたまて、殿でんじやうびとなど、使つかひ、おほんむまて、らんあそたまる、おもこと、とおぼる。

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