【枕草子・原文】第25段 憎きもの

にくもの
いそことをりに、長言ながごとする客人まらうどあなづらはしきひとならば、「のちに」などひても、つべけれども、さすがに、こころづかしきひといとにくすずりに、かみりて、たるまたすみなかに、いしもりて、きしきしと、きしたるにはかわづらひとるに、げんもとむるに、れいところにはほかる、たづありほどに、まちどほに、ひさしきを、からうじよろこびながら、させするに、ごろものこうじにけるるままに、すなはち、ねぶごゑたるいとにくし。でふことひとの、すずろにちに、ものいたたるをけびつなどに、うらかへし、しわべなどて、あぶものかは、わかかやかなるひとなどの、は、したりし。ばみうたてものこそをけはたに、あしをさへもたて、ものふままに、りなどもらめやうものは、ひともとて、とするところを、づ、あふぎて、ちりはらてて、さだまらず、ひろめきて、かりぎぬまへしもざまに、まくれても、かしかることは、ものきは、とおもへど、すころしきものの、しきだい駿河するがぜんなどが、なり。
またさけみて、あめき、くちさぐり、ひげものは、それをでて、さかづきひとするほどしきいみじく、にくしとゆ。「また、め」など、なるべしぶるひをかしらり、口角くちわきさへれて、わらはべの、「国府こう殿どのまゐて」など、うたやうにする。れはしもまことひとの、たまより、こころしと、おもなり
ものうらやうへなげき、ひとうへひ、つゆばかりのことも、ゆかがり、まほしがりて、をば、ゑんそしまたわづかにわたことをば、われもとよりたることやうに、ことひとにもかたり、調しらふも、いとにくし。
もの」とおもほどに、ちごからすの、あつまりて、ちがひ、たるしのびてひとりて、ゆるいぬは、ころつべしまじう、あながなるところに、かくたるひとの、いびきたるまたみそかに、しのびてところに、ながして、さすがに、ひとと、まどづるほどに、ものに、さはりて、そよろ、とはせたるいみじにくし。など、たるを、かづきて、さらさら、とらしたるも、いとにくし。かうは、して、かたものの、るるいとしるし。れも、やをらげて、りするは、さらに、らす。またやりなど、あらくるも、いとにくし。すこし、もたやうにて、くるは、はする。しうくれば、さうなども、たほめかし、ごほめくこそしるけれ
ねぶ」とおもひて、たるに、の、ほそごゑりて、かほもとありく、かぜさへ、ほどこそいとにくけれきしめくくるまりて、ありものみみも、と、いとにくし。たるは、くるまぬしさへ、にくし。
物語ものがたりなどするに、て、われひとさいぐるものは、わらはも、大人おとなも、いとにくし。むかしものがたりなどするに、りたりけるは、ふと、て、くたしなどする、いとにくし。ねずみの、はしありく、いとにくし。
あからさまに、たるども、わらはべを、らうたがりて、をかしきものなど、らするに、らひて、つねて、りて、調てうらしぬるぬくし。いへにても、みやづかどころにても、「なむ」とおもひとの、たるに、そらたるを、もとものどもの、こしては、「寝穢いぎたな」とおもかほに、るがしたるいとにくし。
いままゐりの、えて、ものがほに、をしやうなることひ、うしろたるいとにくし。ひとにてほどはやう、をんなこと出だしなど、するも。ぎて、ほどけれど、なほにくし。して、たりたらこそおもるれれど、れは、しもやうも、かしはなて、もんするひとおほかたいへをとこしゆうならでは、たかく、はなたるものいとにくし。のみも、いと、にくし。きぬしたに、をどありきて、もたぐるやうにするも。またいぬの、もろごゑに、ながながと、たるまがまがしくにくし。
乳母めのとの、をとここそれ、をんなは、れど、ちかくもらねば、し。をのこをば、ただものにして、ひ、りやうじて、うしろいささかも、の御ことに、たがものをば、ざんし、ひとをば、ひとともおもたらず。あやけれど、れがとがを、こころまかせて、ひとければ、ところいみじおもちして、ことおこなひなど、する

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※厳しい表現も見えますが、家屋の造りなど含めた時代背景、情景を豊かに想像させられる段の様です。

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