【枕草子・原文】第260段 関白殿、二月十日の程に

関白殿くわんぱくどの二月きさらぎ十日とをかほどに、輿いんしやくぜんどうにて、いつさいきやうやうさせたまにようゐんみやまへますべければ、二月きさらぎ朔日ついたちほどに、でうみやへ、たまけて、ねぶたくりにしかば、なにごと翌朝つとめての、うららかにたるほどに、たれば、いとしろう、あたらしう、をかしに、つくたるに、よりはじめて、昨日きにふけたるめり。御しつらひ、こまいぬなど、「ほどけむ」とをかしき。さくらの、いちぢやうばかりにて、いみじたるやうにて、はしもとれば、「いとたるかな。むめこそただいまさかめれ」とゆるは、つくりたるめりすべて、はなにほひなど、たるおとに、うるさかりけむ。「あめらば、しぼなむかし」と、くちしきいへなどものの、おほかりけるところを、いまつくたまれば、だちなどの、どころるは、いまだ、し。ただ中宮みやさまぢかく、をかしなる、殿とのわたたまり。あをにびかたもんの御さしむきさくらなほに、くれなゐおんつばかり、ただなほかさねてたてまつたるまへよりはじめて、こうばいの、き、うすおりものかたもんりふもんなど、かぎり、たれば、ただひかちて、からぎぬもえやなぎこうばいなどもり。
まへに、させたまて、ものなど、こえさせたまふ。御いらへの、あらまほしさを、「さとびとに、わづかに、のぞばや」とたてまつにようぼうどもを、らんわたして、(ふじわらのみちたか)「中宮みやに、なにごとおぼらむここめでたひとびとを、ゑて、らんずるこそいとうらやましけれひとaろきひとこれいへいへむすめかしあはなり。かへりみてこそさぶららはたまても、の中みやこころをば、たてまつて、あつまりまゐたまるぞ、に、しく、ものしみ、させたま中宮みやとて、われは、まれさせたまより、いみじつかまつれど、だ、ろしの御ひとたまぞ。なにか、しりうごとにはこえ」などのたまが、をかしきに、みなひとびとわら。(道隆)「まことぞ。なりとわらひ、まするが、づかし」など、のたまほどに、より、御使つかひにて、しきじようなにがしまゐ
おほんふみは、だいごん殿どのたまて、殿とのに、たてまつたまへば、きて、(道隆)「いとゆかしきふみかな。ゆるされはべば、けて、はべ」とのたれば、(中宮定子)「あやしう」と、おぼめり。(道隆)「かたじけなくもり」とて、たてまつたまば、たまひても、ひろげさせたまやうにもさせたまようなどがたき。すみより、にようぼうしとねでて、三人みたり四人よたりちやうもとに、たり。(道隆)「なたに、まかて、ろくことものはべ」とて、たまぬるのちに、おほんふみらんず。御かへしは、こうばいかみに、たまふが、御の、おないろにほたる、(清少納言)「なほも、はかまゐするひとは、」とくちしき。(道隆)「は、ことさらに」とて、殿とのの御かたより、ろくは、ださせたまをんなさうぞくに、こうばいほそながへたり。さかななど、れば、まほしけれど、(御使いの者)「は、いみじことぎやうかうに、きみゆるさせたま」と、だいごん殿どのにもまうして、
きんだちなど、いみじさうたまひて、こうばいの御も、おと、とたまるに、さんまへは、くしげ殿どのなり。なかひめぎみよりも、おほきにたまて、「うへ」など、こえ
うへも、わたたまちやうあたらしくまゐたるひとびとには、たまば、いぶせここつおひて、さうぞくあふぎなどのことを、るも、り。またいどはして、(女房一)「は、なにか、ただに、まかせてを」などひて、(女房二)「れいきみ」などにくまる。まかンひとも、おほかり。かるこおに、まかンれば、とどめさせたま
うえわたり、よるも、ます。きんだちなど、すれば、まえひとすくなさぶらば、いとし。の御使つかひ、まゐまへさくらいろさらなどにたりしぼみ、わるうなるだにしきに、あめの、よるたるつとめていみじとくなり。いときて、(清)「きてわかかほに、こころおとこそれ」とふを、たまひて、(中宮)「に、あめはひつるかしなら」とて、おどろたまふに、殿とのの御かたより、さぶらひものども、など、て、あまはなもとに、ただりに、りて、たふりて、(侍)「(道隆)『みそかにきて、だ、くらからに、れ』とこそおほられつれぎにけり便びんなるわざかな。く、く」と、たふるに、いと、をかしくて、(清)「『はばなむ』と、かねずみことを、おもたる」とも、ひとならば、まほしけれど、(清)「の、はなぬすひとは、たれしかめり」とへば、わらひて、いとどげて、ぬ。なほ殿とのこころは、をかしすかし。「くきどもに、まろがれきて、に、からまし」とて、
掃殿司かもんづかさまゐて、かうまゐり、との殿もりにようくわん、御きよめ、まゐてて、させたまるに、はなければ、(中宮)「あかつき、(清)『ぬすびとり』となりつるは、なほえだなどを、すこるに、とこそれ。が、しるぞ。」とおほらる。(清)「も、はべず。いまくらくも、はべざりつるを、しろみたるものの、はべば、はなるにと、うしろめたさに、まうはべる」とまうす。(中宮)「とも、は、殿とのの、かくさせたまめり」とて、わらたまへば、(清)「いで、よも、はべはるかぜの、はべなむ」とけいるを、(中宮)「(清)『』とて、かくすなりけりぬすみにはらで、『りにこそる』なりれ」とおはらるるも、めづらしきことならど、いみじう、めでたき。殿とのませば、(清)「くたれのあさがほも、ときならずらんむ」と、らる。しますままに、(道隆)「はなせにけるは、に、は、ぬすしぞ。ぎたなかりけるにようぼうたちかな、ざりけるよ」と、おどたまへば、(清)「れど、われよりさきに」とこそおもひてはべめりれ」と、しのびやかにふを、いとけさせたまて、(道隆)「おもことに、ことひとでて、さいしやうと、とのほどなら、と」といみじわらたまふ。(中宮)「なるものを、せうごんは、はるかぜおはける」と、中みやまへに、たまへる、めでたし。(中宮)「そらごとを、おははべなり。いまは、やまつくらむ」と、ずんさせたまるも、いとなまめき、をかし。(道隆)「ても、なたく、られけるかな。ばかり、いましつるものを。ひとところに、かるものの、こそ」とのたます。(道隆)「はるかぜは、そらに、いと、をかしうも、ふかな」と、ずんぜさせたまふ。「ただごとには、うるさく、おもりてはべりつかしさまはべまし」とて、わらたまふを、わかぎみ、「れど、れは、いとて(清)『あめれたりなど、おもてせなり』と、はべ」とまうたまへば、いみじう、ねたがらせたまも、をかし。
て、八日ようか九日ここのかほどに、まかンるを、(中宮)「いますこし、ちかして」など、おほせらるれど、いみじう、つねよりものどりたるひるかた、(中宮)「はなこころひらたりや。が、ふ」とのたまたれば、(清)「あきは、だしくはべど、よるここのたびなむのぼここはべ」など、こえさせつ。させたまひしよるくるまだいく、(女房)「ず、ず」とさわぐが、にくければ、べきひとたりと、「なほくるまさまの、いとさわがしく、まつりかへさなどのやうに、たふべくまどふ、いとぐるし。ただべきくるまくて、まゐらずは、おのづから、こしたま」など、わらひて、てるまへより、りて、まどてて、でて、「か」とふに、「だ、に」といらふれば、みやづかさて、「たれたれか、する」ときて、「いとあやしかりけることかな。いまは、みならむこそおもつれは、どて、は、おくさせたまへる。いまは、とくせんとしつるに。めづらかなる」などおどろきて、さすれば、(清)「は、ず、の御こころざしりつらむひとを、たまひて、つぎにも」とこゑけて、(宮司)「しからず、はらぎたなく、けり」などへば、つぎには、まことに、くるまれば、も、いとくらきを、わらひて、でうみやに、まゐきたり。
輿こしは、らせたまひて、みなしつらひ、させたまけり。(中宮)「べ」とおはせられければ、きやうこんなどわかひとびとまゐひとごとれど、かりけりるるにしたがひ、たりづつ、まえまゐつどひて、さぶらに、(中宮)「なるぞ」とおほられけるかぎり、ててからうじて、られて、(右京達)「ばかりおほらるるには、ど、おそく」とて、ひきゐてまゐるに、れば、(清)「に、うは、としごろまひのさまに、しましきたるにか」と、をかし。(中宮)「なれば、なにかと、たづばかりは、えざり」とおほらるるに、とかくもまうさねば、もろともりたるひと、「いとわりなし。さいてのくるまはべひとは、でか、まゐはべむ。これも、ほとほと、まじはべつるを、が、いとほしがりて、ゆづはべつるなり。くらはべことこそびしうはべつれ」と、わらわらふ、けいするに、(中宮)「ぎやうするものの、いとあやしきなり。またどかは。こころらざらむものこそつつまめ、もんなどは、かし」などおほらる。(右衛門)「れど、でか、はしさきはべむ」などふも、かたへひと、「にくし」とくらむ、とこゆ。(中宮)「さましうて、りたらむも、かしこかるべきことかは、さだたらさまの、やんごとからむこそ、から」と、ものに、おぼしたり。(清)「はべほどまちどほに、くるしきにりてに」とまうなほす。
きやうことに、わたしまさとて、よひまゐりたり。みなみいんきたおもてに、のぞたれば、たかつきどもに、ともして、二人ふたり三人みたり四人よたりべきびやうへだるもり、ちやうなかへだたるり。またらでも、あつまりきぬども、かさね、こしし、さうずるさまは、さらにもはず、かみなどものは、よりのちは、がたゆる。(女房)「とらときになむ、わたらせたまへるなり。どか、いままで、まゐたまはざりつる。あふぎて、たづこゆるひと」など、ぐ。
(清)「て。まことに、とらときか」と、さうちてるに、ぎ、も、でぬ。西にしたいからびさしなむせてべきとて、かぎり、わた殿どのほどに、だ、うひうひしきほどなるいままゐどもは、いとつつましなるに、西にしたいに、殿とのたまへば、中みやにも、しまして、づ、にようぼうくるませさせたまふを、らんずとて、うちに、中宮みや淑影者しげうしやさんきみ殿とのうへの御おとうとところみて、します。
くるまひだりみぎに、だいごんさんちゆうじやうふたところして、すだれげ、したすだれたまふ。みなうちれてだにらば、かくどころたりづつ、てにしたがひて、「れ、れ」とてて、せられたてまつあゆここいみじう、まことに、あさましう、しようなりとも、つねなり。うちに、許多そこらの御どものなかに、中みやまへの「ぐるし」とらんは、さらに、びしきことかぎし。より、あせゆれば、つくろたるかみなども、「がり、すらむ」とおぼゆ。からうじて、たれば、くるまもとに、いみじう、づかしに、きよなる御さまどもして、みてたまふも、うつつならず。れど、たふれず、までは、きぬるこそ。「かしこかほきか」とおぼゆれど、みなてぬれば、でて、でうおほに、しぢてて、ものぐるまやうにて、ならたるいと、をかし。「ひとも、らむかし」とこころときめきせらる。ろくなど、いみじう、おほう、り、くるまもとて、つくろひ、ものひなどす。
づ、ゐんの御むかへに、殿とのはじたてまつて、殿でんじやうと、と、みなまゐ。「れ、わたたまのち中宮みやは、でさせたまふべし」とれば、「いとこころもとし」とおもほどに、がりてぞ、ます。御くるまめに、十五。つは、あまぐるまいちの御くるまは、からくるまなり。れにつづきて、あまくるましりぐちより、すいさううすずみぎぬなど、いみじくて、すだれげず、したすだれも、うすいろすそすこき。つぎに、ただにやうぼうの、とをさくらからぎぬうすいろくれなゐわたし、かとりうはども、いみじう、なまめかし。は、いとうららかなれど、そらは、あさみどりかすわたるに、にようぼうさうぞくの、にほひて、いみじおりものいろいろからぎぬなどよりも、なまめかしう、をかしきことかぎし。
くわんぱく殿どのの御つぎ殿とのばら、するかぎり、かしづたてまつたまいみじう、めでたしこれら、たてまつさわぐ。くるまどもの、二十、べたるも、また、「をかし」とらむかし
(清)「何時いつしか、させたまば」など、こえさするに、(清)「なら」と、こころもとおもふに、からうじて、うね八人、むませて、めりあをすそたいなどの、かぜられたる、いと、をかし。ぜんうねは、くすしげまさひとなり。ぞめおりものさしぬきたれば、「しげまさは、いろゆるされけり」と、やまだいごん(藤原道頼みちより)は、わらひて、みなつづきて、てるに、いまぞ、輿こしでさせたま。「めでたし」とたてまつつるありさまに、これは、くらべからざりけり。
朝陽あさひ花々はなばながるほどに、の、いとはなやかにかがやきて、輿こし帷子かたびらの、いろつやなどさへぞ、いみじき。御つなりて、でさせたま輿こし帷子かたびらの、ゆるるぎたるほどまことに、「かしら」など、ひとふは、さらに、そらごとならず。て、のちに、かみしからひとも、かこべし。あさましう、いつくしう、(清)「なほで、かるまへに、つかうまつらむ」と、も、かしこおぼる。輿こしさせたまほどくるましぢども、ひとたまひに、ろしたりつる、またうしども、けて、輿こししりつづきたるここの、めでたうきようありさまかたし。
しましたれば、だいもんもとに、もろこがくして、こまいぬをどひ、さうおとつづみこゑに、ものおぼず。「は、いづの、ほとけくになどに、ける」と、そらに、ひびのぼやうおぼゆ。門内うちりぬれば、いろいろにしきあげばり、いとあをわたし、屏幔へいまんなど、たるほどべて、ただに、おぼえず。桟敷さじきに、たれば、また殿とのばら(藤原伊周、藤原隆家)、たまひて、「く、りよ」とのたまふ。りつるところだに、りつるを、いますこし、かう、しようなるに、だいごん殿どのいとものものしく、きよにて、御したがさねしり、いとながく、ところにて、すだれげて、(伊周)「はや」と、のたまふ。つくろへたるかみも、からぎぬなかにて、ふくだみあやしうたらいろくろさ、あかささへ、かれぬべきほどなるが、いとびしければ、ふとも、りず。(清)「づ、しりなるこそは」などほども、れも、おなこころ、(同車の女房)「退しりぞたまへ。かたじけし」などふ。(伊周)「たまふかな」などわらひて、かへり、からうじて、りぬれば、して、(伊周)「(中宮)『ねむたかなどに、せで、して下ろせ』と、中宮みやおほせらるれば、たるに、おもぐまき」とて、ろして、まゐたま。(清)「こえさせたまひつらむ」とおもふも、かたじけし。
まゐたれば、はじめ、りけるひとどもの、ものの、えぬべきはしに、やたばかり、けり。一尺と二尺ばかりのたかさの長押なげしうへに、ます。(伊周)「に、かくして、まゐたり」とまうたまへば、(中宮)「いづら」とて、ちやうなたに、でさせたまへり。だ、からの御葡萄えびめのいつの御に、あかいろからの御ずりからうすものに、ざうがんかさたるなど、たてまつたりおりものいろさらに、べて、るべきやうし。
(中宮)「われをば、る」とおほせらる。(清)「いみじうなむさぶらつる」なども、ことでては、つねにのみこそ。(中宮)「ひさしうつるれは、殿とのだいの、(道長)「ゐんの、御ともて、ひとぬるおなしたがさねながら、中宮みやの御とも、『ろし』と、ひとおもなむ」とて、ことに、したがさねはせたまけるほどに、おそきなりけり。いと、たま」などと、わらたまいとあきらかに、たるところは、いますこし、ざやかに、めでたう、御ひたひげさせたま釵子さいしに、御わけの御ぐしの、いささりて、しるさせたまふなどさへこえかたき。三尺の御ちやうひとよろひを、ちがへて、此方こなたへだてにはして、うしろには、たたみひとひらを、ながさまに、へりをして、長押なげしうへきて、ちゆうごんきみふは、殿とのの御ひやうかみただきみこえけるが御むすめさいしやうきみとは、とみのこうだいじんの御まご二人ふたりうへて、tあまらんわたして、(中宮)「さいしやうは、彼方あなたて、うへびとどものたるところきてよ」と、おほらるるに、こころて、(宰相の君)「三人みたり、いとく、はべべし」とまうせば、(中宮)「は」とて、げさせたまば、しもたるひとびと、(女房)「殿でんじやうゆるるる舎人どねりめり」と、(清)「わらむとおもか」とへば、(女房)「馬副童むまさへほど」などへば、て、るは、いとおもたし。かることなどを、みづかふは、がたりにもり、またきみの御ためにも、かろがろしう、(女房)「ばかりのひとをさへ、おぼけむ」など、おのづから、ものり、なか批判もどきなどするひとは。あいなくかしこき御ことかりて、かたじけけれど、「あな、かたじけこと」などは、またかがは。まことに、ほどたることも、りぬべし
ゐんの御桟敷さじきところどころじきども、わたしたる、めでたし殿とのは、づ、ゐんの御じきまゐたまて、しばりて、に、まゐたまり。だいごんふたところさんちゆうじやうは、ぢんちかう、まゐけるままにて、調てうひて、いと付々しう、をかしうて、す。殿でんじやうびと事痛こちた、御ともさぶらたり。らせたまて、たてまつらせたまに、にようぼうかぎり、からぎぬくしげ殿どのまで、たまへり。殿とのうへは、うへに、うちきをぞたまへる。(道隆)「たるやうなる、御さまどもかな。いまらへ、「は」とまうたまさんきみの御がせたまへ。なかくんには、まへこそしませ。御じきまへに、ぢんゑさせたまるは、おぼろことか」とて、たまふ。「に」と、ひとも、なみだぐましきに、あかいろさくらいつからぎぬたるを、らんじて、(道隆)「ほふふくひとまだりらざりつるを、にはかに、まどひしつるに、これこそまうすべかりけれらば、し、またやうものを、調しらめたるに」とのたまはするに、またわらひぬ。だいごん殿どのすこし、退しぞたまへるが、たまひて、(伊周)「せいそうのに」とのたまふ。ひとこととして、をかしからぬこと
そうきみあかいろうすものの御ころもむらさき、いとうすいろの御ども、さしぬきたまひて、さちおほんやうにて、にようぼうじり、ありたまふも、いと、をかし。(女房)「そうがうの中に、そくしてもしまさで、ぐるしう、にようぼうの中に」など、わらふ。
ちちだいごん殿どのまへより、まつぎみたてまつる。葡萄えびぞめおりものなほあやの、たるこうばいおりものなど、たまへり。れいの、、いとおほかり。御じきに、にようぼうの中に、たてまつる。なにごとあやまりにか、ののしたまさへ、いとはえばえし。
ことはじまりて、いつさいきやうを、はす造花はなあかきに、ひとはなづつそうぞくかんだち殿でんじようびと地下ぢげろくなにくれまで、わたる、いみじたふとし。だいぎやうだうだうまゐり、かうしばちて、まひなどする、らし、るに、たゆく、くるしう。内裏うちの御使つかひに、くらうどまゐりたり。御じきまへに、胡床あぐらてて、たるなど、にぞ、なほ、めでたき。さりかたしきじようのりまさまゐりたり。(則理)「(一条天皇)『やがて、さりたまふべし。御ともさぶらへ」と、せんはべつ」とて、かへりもまゐず。中宮みやは、「なほかへりて、のちに」とのたまはすれども、また蔵人くらうどべんまゐりて、殿とのにも、御せうそこれば、ただ、(道隆)「おほせのまま」とて、らせたまなどす。
ゐんの御じきより、「しほがま」などやうの御せうそこ、をかしきものなど、まゐかよたるなども、めでたしことてて、ゐんかへたまふ。ゐんかんだちなど、たびは、かたぞ、つかたてまつたまける中宮みやは、内裏うちたまぬるも、らず、にようぼうどもは、「でうみやにぞ、まさ」とて、に、みなて、てど、てど、えぬほどに、いた内裏うちには、(清、他)「宿直とのゐものたらむ」とつに、きよく、えず。あざやかなるきぬの、にもを、て、さむきままに、にくはらてど、し。翌朝つとめてたるを、(清)「に、く、こころきぞ」などへば、となふるごとも、はれたり
またあめたるを、殿とのは、(道隆)「これなむ宿すくは、はべぬるが、らんずる」と、こえさせたまふ。御こころことわりなり。

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